【基礎】数珠が持つ意味や使い方とは。知ってくべき正しい選び方や作法

数珠というと、幼いころに祖父母の家にあった仏壇に向かって念仏を唱える時に使用した、という思い出を持つ方もいるのではないでしょうか。

宗教の教えに自覚を持って信じる人が少ないと言われている日本ですが、お墓参りやお葬式などには仏教の法具のひとつである数珠を持つことがポピュラーなこととして知られています。

使用する頻度こそ少ないかもしれませんが、ある意味生活の中に当たり前のように溶け込んでいる数珠。
そんな数珠の意味や取り扱い方などを知っておきましょう。

数珠とは?

数珠は「じゅず・ずず」、あるいは漢字を変えて念珠「ねんじゅ」、珠教「じゅず」と呼ばれることもあります。
たくさんの穴の開いた小さい珠を糸に通して輪にしたもので、中にはふさの付いた物もあり、信仰の象徴的意味を持つ仏教の法具として扱われています。

宗派によっては形状や珠の数などに特定の教えや意味があるケースもありますが、一般的に扱われることが多い略式数珠については、それぞれの教義などを気にすることは少なくなっています。

数珠ははるか古代インドのバラモン教やヒンドュー教などで使用されていた道具を起源とすると言われており、その後は中国、そして日本に伝来してきました。日本に伝わったのは仏教伝来と同時期にあたる飛鳥時代で、鎌倉時代になると僧侶以外、一般の方に向けても徐々に仏具として広まってきました。

さらに現代では簡易化され、カラフルな水晶を使用したようなファッションとして扱いやすい、ブレスレッドタイプの数珠も登場しています。
新しく作られた数珠にも様々な意味が込められており、意味を理解して使用することでその効果も大きいものとなるでしょう。

数珠の持つ意味

数珠は主に念仏を唱える時や祈りをささげる時、厄払いをする時に使用します。

日本でもお葬式などの儀礼の時に願いなどの意味を込めて数珠を使用しますが、元は仏や礼拝する時に使用する道具です。簡単に分けると、数珠は本式数珠、略式数珠の種類に分類できます。

本式数珠とは、各宗派によって正式な物として定められた数珠で、玉の数が定められていたり、2連状の形になっていたり、それぞれの教義に則って扱う数珠の種類が決められています。
略式数珠とは、宗派にこだわらず誰でも扱うことができる数珠として知られています。

一般的な数珠はこちらの略式数珠である場合が多く、誰でも一度は見たことがあるような1連状の手頃な数珠として販売されています。

数珠は108個の珠で形作られることもありますが、この108個には大きな意味があります。これは108個ある煩悩をその珠の数で持って爪弾きながら数え、少しずつ消滅させることを意味しています。

他にも、金剛界百八尊における菩薩の数と同じ球の数である54個の珠で作られる場合や、27聖賢に因み、27の球で作られる数珠などがあります。
珠の数によっては片手で扱うことができるため、「片手数珠」と呼ばれることもあります。

これらの数珠は、珠の数によってそれぞれが意味を持つようになっています。
そして数珠は現代においては幸福を呼ぶ、あるいは厄を払う意味を持つ物として扱われることも増えてきました。
そのため簡単に身に着けることができるように、ブレスレッドタイプの数珠も多く登場しています。

他にも、こちらはあまり一般的でありませんが、ひとつの球が男性のこぶし以上もある珠が連なった、大きい数珠も存在しています。大きい数珠は主に人々が車座になり、ゆっくりとひとつずつ大きい数珠を回し、お念仏を唱えるための物として扱われています。
各地方では「大数珠回し」などとして、大きい数珠を使用しての特別な意味がある儀礼が行われていることもあります。

数珠の持ち方

数珠の持ち方として基本的なスタイルはありますが、宗派によってはそれぞれ決められた作法が存在しますが、ここでは一般的な略式数珠の持ち方とその意味を知っておきましょう。

略式数珠を持つ場合には、左手で持つことが作法となります。
諸説ありますが、仏教の世界では右手は現世、左手は仏様の世界を表す意味を持つものとして扱われています。仏様の世界に近い左手で持つことが祈りの力を高める、神聖な仏具を持つに相応しい手と意味されています。

一説では仏教発祥の地であるインドでは左手は不浄、右手は清浄といった意味で扱われています。そのため不浄である左手を清める意味で左手に数珠を持つ、という考え方もあるようです。

数珠の作法

数珠を手に持ち歩く際には、ふさが付いている数珠の場合は、ふさが下に垂れるようにして持ちましょう。ふさを掌の中に握ってしまわないように注意してください。

そして合掌を行う際には、左手だけに数珠をかけて右手を添える方法と、右手も左手と同じように数珠の中にくぐらせて合掌する方法があります。
こちらは特にどちらが正しい正しくない、意味を持たないということはありません。座っている時にも左手で持つか左手首にかけておくことが、数珠の持ち方になります。

お葬式で数珠を取り扱う際には、お焼香のタイミングになって取り出すのではなく、事前に手の中に用意しておきましょう。

焼香をする時に、椅子の上に置きっぱなしにしては意味がありませんので、気をつけてください。祈りを行う道具として、葬儀が行われている間はできる限り常に手に持ち続けることに意味があります。
読経の最中には合掌して祈る場面もあるので、着席した時点で教本と共に取り出しておくと、慌てることなく対処できるかと思います。

数珠を扱う上での注意点

数珠は仏教において重要かつ身近な仏具ですが、普段から持ち歩くことが少ない場合、あるいは意味を明確に知らない場合には、気づかないところでマナー違反をしてしまうことがあるかもしれません。

子供たちが珍しい数珠を見て楽しくなり、意味もわからず数珠を使って遊んでしまうということは明らかなマナー違反だと分かりますが、大人でも些細なことで行儀の悪い行為をしてしまうことがあるので気をつけましょう。
マナー違反をしては数珠を扱う意味も薄れてしまうので要注意です。

数珠は置きっぱなしにしない、地べたに置かない

数珠は法具なので、大切に扱う必要があります。
例えば、畳の上に置きっぱなしにしたり、机の上・椅子の上に直に置いたりしないように気を付けましょう。
やむを得ず数珠を置く場合には、数珠の下に袱紗(ふくさ)などを置くようにしてください。このように置くことで数珠に対する敬愛の意味を持たせることができます。

数珠をバックに入れる時の注意

数珠を大切に扱うために、バッグやポケットの中などに直接数珠を入れないようにしましょう。
基本的にバッグに入れて持ち運びをする際には、専用の数珠袋や念珠袋の中に入れて持ち運ぶことが大切です。

数珠の貸し借りは行わない

数珠は基本的に扱う人に対して、個人的なお守りのような意味合いを持ちます。家族の内でも、あまり貸し借りを行わない方が良いでしょう。

特に個人用として誂えたものや、贈り物として頂いた物の場合には、その持ち主が大切に扱っていく必要があります。個人のお守りを他の人に渡しても意味がないように、自分自身の数珠は自分で使うことに大きな意味があります。

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いくつかの注意事項を紹介しましたが、お葬式や法事が行われる各家庭によっても、独自の決まりや意味が設けられていることがあります。
大切なことは相手に対する祈りの心だと思いますので、あまり気負わずに心配事がある場合には直接家の方に伺ってみると良いでしょう。

祈りを込める数珠は大切に扱いましょう

数珠の持つ意味と簡単な歴史、そして数珠を扱う際の作法の注意点を紹介しました。
身近にありながら特別な時にしか関わることが無い数珠、今一度その数珠の持つ意味を感じられると思います。

今回紹介したのは略式数珠に関する事柄です。宗派によっては、紹介した作法が通じない場合もあるので気を付けましょう。
祈りを込めて手の中に握ることができる数珠、球を繋ぎ作る形は仏様とのご縁をつなぐ意味を持つとも言われています。粗末に扱ってしまっては祈りも届かなくなってしまいますので、大切にしておきたいですね。

最近では様々な色、形の数珠が身近でも販売されています。
親しい方に数珠を送ることは功徳を積むこととも言われていますので、相手の方にピッタリと合う数珠を探すことも素敵なことかもしれませんね。